特定小型原動機付自転車の保安基準改正を解説: 法改正後の電動キックボードに必要な保安部品について
2022年12月23日に国土交通省 (以下、国交省) から特定小型原動機付き自転車 (以下、特定原付または特定小型原付) の保安基準が公布されました。
特定原付とは電動キックボードに代表される小型の電動モビリティーに対して新たに作られた乗り物の区分です。
この記事では、今回公布された特定原付の新しい保安基準についわかりやすく解説します。
特定原付について
特定原付とは一体なんでしょうか?あまり聞き慣れない言葉ですね。
それもそのはず、特定原付は2022年4月にまとめられた「道路交通法改正案」で新たに新設されたばかりのカテゴリーです。
特定原付の定義は以下となります。
- 電動である
- 最高速度20km/h以下に制限されている
- 幅60cm以内である
- 特定原付に必要な保安部品が装着されている
今回の保安基準が公布されたことで、4番目の特定小型原付に必要な保安部品が決定したことになります。
特定原付には以前の記事でも解説しているので詳しく知りたい方はご一読ください。
ヘルメット任意・免許が不要に:道路交通法改正による規制緩和で電動キックボードのルールはどう変わる?
なお、上記の基準を満たせばどんな車体でも特定原付に区分されます。
つまり、電動キックボードだけではなく電動バイクのような形の車両も特定原付に登録が可能ですが、この記事では解説を簡単にするために特定原付 = 電動キックボード という書き方で進みます。
電動キックボードのルールについておさらい
今回公布された内容について解説する前に、まずは2022年12月現在における電動キックボードのルールについておさらいをしましょう。
電動キックボードを公道で使うためには必ず原付として登録する必要があります。原付なので運転する際は運転免許証やヘルメットも必須となります。
SWALLOWで販売している原付として公道走行可能な電動キックボードの代表として「ZERO9」があります。ガソリンの原付バイクよりもコンパクトで経済的ということが支持され人気商品となっています。
しかし、4月に公布された「道路交通法改正案」で特定原付という新たな区分が加わりました。
特定原付として登録された電動キックボードは運転免許証が不要になり、ヘルメットも努力義務になります。
注意が必要なのは、特定原付は新設されたけど、実際はまだ運用されていないということです。これについては後ほど解説していきます。
道路交通法の改正との違いは?
電動キックボードというと今年の4月に道路交通法改正が公布されたというニュースを聞いた方も多いと思います。今回の発表と道路交通法改正の違いはなんでしょうか?
公道で利用される車やバイクに関係する大事な法律は主に2つあります。
ひとつは「道路交通法」でもう一つは「道路運送車両法」です。
道路交通法は簡単に言うと公道を走る車両のルールについて規定した法律です。例えば、50ccの原付の最高速度は30km/hなどがそれにあたります。
対して、道路運送車両法は公道で走る車両自体を規定するものです。
車両の大きさやエンジン・モーターの出力など乗り物自体に対しての規定です。
例えば、車やバイクにはヘッドライトが必須ということだけではなく、どれくらいの明るさが必要かや動作についても詳細に規定されています。
4月に改正されたのは前者の道路交通法で、特定原付という新しいカテゴリーがルールに追加されました。
今回発表があった保安基準の公布は道路運送車両法に対する変更です。
特定原付というカテゴリーはできたけど車両に関する法律がなかったので今回新しく作りました、ということになります。
特定原付の保安基準について
では、ここから今回改正された保安基準について詳しくみていきましょう。
今回の改正は計4回行われた「新たなモビリティー安全対策ワーキンググループ」での検討結果を踏まえて改正されたものです。
概要をざっくり言うと、既存の原付の基準がそのまま引き継がれた保安部品、要件が緩和された保安部品、不要になった保安部品、の3つに分かれます。
出典: https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001579526.pdf
原付の電動キックボードから引き続き必要な保安部品
- 尾灯
- 制動灯
- 方向指示器
原付の電動キックボードから不要になった保安部品
- 後写鏡
- 速度計
- ナンバー灯
要件が緩和された保安部品
- 前照灯 (照度に対する要件が緩和)
- 警音器 (音色、音量に対する要件が緩和)
- 2系統の制動装置 (二系統のうち片方は電気的なブレーキも認める)
新たに追加された保安部品
- 最高速度表示灯
以上が今回公布された特定原付の保安基準の概要になります。
ほとんどの保安部品は原付から引き継ぐという形になり唯一、「最高速度表示灯」という部品が追加されています。
これは、以前は「識別点滅灯火」という名称だったのですが、名称変更されたようです。
この部品については以前の記事で解説しているのでそちらを参照ください。
ヘルメット任意・免許が不要に:道路交通法改正による規制緩和で電動キックボードのルールはどう変わる?
性能等確認制度について
特定原付の保安基準に加えて大きな変更が「特定原付の性能確認制度」です。
この制度は国交省が委託した民間の機関が、要求される保安基準を満たしているかを検査し合格した車両には認定シールを公布する、という制度です。
この制度の狙いはいわゆる「野良キックボード」の排除です。
現行制度では原付としての保安基準を満たさない電動キックボードが公道で使用されている場合、取り締まりが難しいという課題がありました。
そこで新たに認証シールを公布して、野良キックボードが一目でわかるようにするという狙いです。
これにより、警察は効率良く基準を満たさない特定原付を取り締まることができるようになります。
出典: https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001580160.pdf
新たな保安基準のはいつから?
では、特定原付の保安基準はいつから適用されるのでしょうか?
前述したように、特定原付というカテゴリーは作られましたが、まだ運用は始まっていません。
国交省のホームページによると、適用されるのは道路運送車両法の施行日となっています。つまり、現段階では未定で2024年の4月までに適用されるということになります。
今回の公布があっても特定原付の電動キックボードが世の中に出てくるわけではないので注意が必要です。
出典: https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001579526.pdf
まとめ
今回は特定原付の保安基準について解説しました。最後に今回の改正がどうゆう意味を持つのか考えてみたいと思います。
前述したように、特定原付はまだ運用段階ではないので世の中に特定原付の電動キックボードが出回るということはありません。
しかし、保安基準が定まったことによりメーカー各社が特定原付の製品を開発できるようになりました。
もちろんSWALLOWも今回の改正をしっかり理解した上で、法改正が施行された時に投入できる新製品を開発していく予定です。
これからどのような特定原付の製品が出てくるか今から楽しみですね。
SWALLOWについて
SWALLOWは2019年より公道走行可能な電動キックボードを販売してきた電動キックボードのパイオニアです。最もポピュラーなモデルである「ZERO9」はすでにたくさんのお客様に愛用されています。
SWALLOWは電動キックボードの販売にとどまらず周辺パーツの販売、アフターサポート、電動キックボードのルールに関する啓蒙活動を積極的に行なってきました。
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